Lanshan 1 と Lanshan 1 Pro の違い

世界中の UL ハイカーからの圧倒的な人気を誇る、3F UL GEAR の Lanshan 1。
スタンダートな Lanshan 1 と、上級者向けの Lanshan 1 Pro のどちらにしようか、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、今回は Lanshan 1 と Lanshan 1 Pro の違いを解説したいと思います。

スペックから見る違い

まずは、2つのモデルの基本的なスペックから見ていきましょう。

Lanshan 1Lanshan 1 Pro
タイプダブルウォールシングルウォール
本体重量770g
内訳:フライ 410g、インナー 360g
690g
フライ素材15D シリコン/PU ナイロン20D シルナイロン
インナー素材4シーズン:15D ナイロン
3シーズン:20D ナイロンメッシュ
4シーズン:15D ナイロン
3シーズン:20D ナイロンメッシュ
フロア素材20D ナイロン 耐水圧 6000mm PU コーティング20D ナイロン 耐水圧 6000mm PU コーティング
シーム処理ありなし
バスタブ高さ11 cm11 cm
サイズ本体:270 (L) x 170 (W) x 125 (H) cm
インナー:230 (L) x 100 (W) x 125 (H) cm
本体:270 (L) x 170 (W) x 125 (H) cm
インナー:230 (L) x 100 (W) x 125 (H) cm

ダブルウォールとシングルウォールの違いは、好みが分かれることろかと思います。
一般的にダブルウォールは結露に強く、冬は暖かく過ごせるメリットがあると言われています。
一方のシングルウォールは、その逆で結露に弱く、冬には不向きであると言われています。

しかしながら、どちらのモデルも日本のような多湿気候では、「結露は必ず発生する」と思って頂いた方がよいかと思います。
ダブルウォールでも結露は発生していますが、フライと自分自身の間にインナー生地が存在しているため、結露を感じにくいだけです。
シングルウォールでは、結露が発生した場合、間にインナーの生地がない分、結露の影響を直接受けやすく、シュラフが濡れたりする原因になります。
いずれにしても、日本の環境では結露をゼロにすることはできません。

よく誤解されがちですが、シングルウォールは結露の影響を受けやすい分、テント泊の翌朝にしっかりと結露を拭き取る必要があり、ダブルウォールはその必要がないと言われます。
実際は、ダブルウォールでも結露が発生していますので、結露を拭き取る必要があるのは両方とも同じになります。
むしろ、ダブルウォールの方がしっかりと結露を拭き取らないと、翌日にテントを張った時にインナーまで水浸し、ということになりかねません。

重量について

シングルウォールの Lanshan 1 Pro の方が、ダブルウォールの Lanshan 1 より 80g ほど軽くなっています。
これは、単純に使っている生地の量の違いになります。
シングルウォールの Lanshan 1 Pro は、前室と寝室の間を隔てる生地とベンチレーションのためのメッシュ生地があるのみで、他の生地は全てフライと共通になります。

やや分かりにくいかもしれませんが、上記は Lanshan 1 Pro の外観になります。
前室と寝室の間を隔てる3シーズン用のメッシュが見えています。
このメッシュは、フライ本体に直接縫い付けられているため、取り外すことはできません。

さらに Lanshan 1 Pro には、バスタブとフライの間に上記のようなベンチレーションのためのメッシュが存在します。
結露が発生した際は、フライを辿って、このメッシュ部分から水滴が外に放出される仕組みになっています。
このメッシュも、本体に直接縫い付けられているため、取り外すことができません。
このように、Lanshan 1 Pro は生地の大部分がフライと共通であるため、ダブルウォールの Lanshan 1 よりも軽くなっています。

フライ生地とシーム処理

次にフライ生地について、見てみましょう。


上記は Lanshan 1 の生地の構造を示したものです。(写真クリックで拡大)
Lanshan 1 の生地である 15D シリコン/PU ナイロン は、外側がシリコンでコーティング、内側がポリウレタンでコーティングされたナイロンになります。
一般的に、シリコンでコーティングされた生地には防水のためのシームテープを貼ることができませんが、Lanshan 1 のフライは内側がポリウレタンでコーティングされているため、工場出荷時にすでにフライの内側にシームテープが貼られています。
これにより、Lanshan 1 は完全防水になります。

一方の Lanshan 1 Pro の生地である 20D シルナイロンは、両面がシリコンでコーティングされたナイロンになります。
従って、工場出荷時には「シームテープが貼られていません」。
完全防水にするためには、ご自身でシーム処理を行なって頂く必要があります。

シーム処理とは、上記の写真のように縫製部分に目止め剤を塗布する作業になります。
目止め剤は、Seam Grip + SIL あたりが有名で Amazon で1,500円程度で購入できます。
目止め剤は塗布後、およそ半日で固まります。

Lanshan 1 Pro がシルナイロン生地を採用する理由

ここまで読まれた方は、なぜ Lanshan 1 Pro は両面シルナイロンなのか、と疑問に思われるかもしれません。
その理由は、Lanshan 1 Pro は耐久性を重視しているためです。

長期間に渡って紫外線や雨風にさらされる long distance hiking では、フライの生地そのものよりも、シームテープやウレタンコーティングが最も早く劣化します。
いわゆる加水分解という現象で、これによりシームテープが剥がれてきたり、ウレタンコーティングが液状化したり粉々になったりします。
そうなると、雨天時に縫製部分から浸水が起き始めます。

一般的には両面シルナイロンの生地は、シリコン/PU ナイロン生地よりも3倍ほど寿命が長く、引き裂き強度も同じく3倍ほど優れていると言われています。
ハイキングの行程途中で、テントの雨漏りが発生するリスクを最小限に抑えたモデルが Lanshan 1 Pro であると言えます。
また、最低限の箇所だけシーム処理を行うことで、全体にシームテープを貼るよりも軽量化できるというメリットもあります。
個人的な見解にはなりますが、シーム処理はフライ生地同士の縫製部分のみで十分であり、フライとメッシュの縫製部分はやらなくとも必要最低限の防水性能を確保できていると感じます。

ダブルウォールのメリット

自分自身でシーム処理をしなければいけない点を除けば、より軽くて耐久性に優れる Lanshan 1 Pro の方が良い、と結論づけしてしまいそうですが、ダブルウォールの Lanshan 1 にもメリットがあります。
まずは、季節や状況によってインナーを切り替えられる点です。


上記は Lanshan 1 の3シーズン用インナーと4シーズン用インナーの外観になります。
春から秋にかけては、風通しの良いフルメッシュの3シーズン用インナーを使用して、冬は防風透湿性のある4シーズン用インナーに切り替えることで、1年を通して同じテントを使うことができます。
わざわざ、冬用とそれ以外のシーズンのテントを別々に所有する必要がないという点は、コストを抑えたいハイカーにとっては朗報かと思います。

実際、自分自身も最初は Lanshan 1 の3シーズンモデルから使い始め、冬になる前に4シーズン用のインナーを買い足して通年使用するようになりました。
このようにインナーが取り外せるからこそできる使い方は、Lanshan 1 Pro にはないメリットになります。

次にフロアレスのシェルターとしての使い方ができる点です。

上記はインナーを外して、フライのみで使用した Lanshan 1 の様子です。(写真クリックで拡大)
使う時期や条件はやや限られますが、インナーが存在しない分、自然をダイレクトに感じ取れるのがフロアレスの醍醐味です。
フライだけの重量であれば、440g とツェルト並の軽量になります。

自分はこの使い方がしたいがために、Lanshan 1 Pro ではなく、わざわざ Lanshan 1 をフロアレスの状態でトレイルに持っていくことがよくあります。
特に虫が少ない冬から春先にかけては、まさに上記の写真のようにフライを開けっぱなしで、夜は星を眺めながら眠りにつくのが至福の時間だったりします。

まとめ

このように、Lanshan 1 と Lanshan 1 Pro は見た目が似ていても、その特性や用途が大きく異なります。
それぞれのテントについて、まとめると以下のようになります。

Lanshan 1 が向いている人

・価格を少しでも抑えたい
・インナーを切り替えながらオールシーズンでテントを使いたい
・フロアレスとしても使いたい

Lanshan 1 Pro が向いている人

・とにかく軽量化したい
・自分でシーム処理することに抵抗がない
・耐久性を重視したい

最後に、もう1つの考え方としてステップアップというものがあります。
やはり、最初は安心感が得られるダブルウォールの Lanshan 1 から初めて、経験値がアップしたところでシングルウォールの Lanshan 1 Pro にステップアップという形です。
高価なテントであれば、なかなか難しい選択肢もコストパフォーマンスに優れる Lanshan シリーズであれば、実現できてしまいます。

みなさんも Lanshan 1 / Lanshan 1 Pro で UL ハイキングをデビューされてみては、いかがでしょうか。
ハッピートレイルライフを!

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